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Shimokitazawa Indies Fanclub

CROSSTALK #01

曽我部恵一
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星野 源(SAKEROCK)

ソロで歌いはじめたきっかけは、“呪い”みたいな気持ちから

曽我部 星野くんとは、2006年に一度、弾き語りのライヴで一緒になったじゃない?

星野 はい。あの年ぐらいから歌いはじめたんです。手売りのCD-Rを出したちょっと後ぐらいだったと思うんですけど。

曽我部 そのCD-RをCITY COUTRY CITYのスタッフの誰かがCD-R持ってて、お店でよくかけてたんですよ。で、すごい良くてそれが。さすがっていうか。弾き語り上手いっすよ。

星野 (恐縮しながら)いやいやいや、ホントにもう。自分で歌いはじめた頃は、その時いろいろイヤなこととかが重なって……歌ってイヤなことが重なったりすると、ポロッと出来たりする時があるじゃないですか? なんかそういう曲ばっかりだったんですよね。呪いというか……「死ね!みんな死ね!」みたいな(笑)。

曽我部 えーっ! 全然、そんな感じしないよね?(笑)。

星野 その当時は本当にもう、みんなに伝えようって意識よりも、このまま吐き出さないと狂ってしまうから、出してしまおうかなって思って歌いはじめたんです。今回リリースするソロ・アルバムは、そのうちの曲も入ってるんですけど。でも“作品”を作ろうって思って作ったのは、ソロでは初めてです。曽我部さんが、サニーデイ・サービスを解散してソロになった時って、葛藤とかもありましたか?

曽我部 うーん、難しいっすよね。俺は、歌うっていうのは難しいほうだから。

星野 難しい?

曽我部 星野くんの聴いてると、すごい自然に歌ってるじゃないですか。喋ってる延長線上に音楽があるから。そういう人はやっぱり、すごいうらやましいなと思うんだよね。なんていうか、歌の題材を探してないっていうか……もちろん、いろいろチョイスしてるとは思うけど。なんでも歌に出来る人だろうなぁって、ソロ・アルバム聴いてて思った。歌うって行為自体が、星野くん自身とわりと近いっていうか。俺は、歌を作って歌うっていう行為をすごく大げさに捉えちゃってるところがあって。だから、そういうふうに自然に音楽に出来て、自然に声が出せる人っていうのは、うらやましいと思う。

星野 だけど、ホントはもっと歌い上げたいんです。なんていうか、高くて綺麗な歌声にすごい憧れてて。小学校のころとかにユニコーンとかサザン(オールスターズ)がすごい好きで、歌い上げる感じの声に憧れてたんですけど、家の中で歌本とか見ながら弾き語りして、それをラジカセで録って聴いたら、信じられないぐらいに声がもさもさしてて、なんだこれ!と思って(笑)。自分の思ってる声と違いすぎて、そこからすごいコンプレックスになっちゃったんですよ。

曽我部 なるほどね。

星野 だけど、歌はやっぱり好きだったから諦めきれなくて、サニーデイのカヴァーの時にコーラスとかしてたんですけど、やっぱり納得がいかなくて、すごい落ち込んじゃったりしたんです。でも、細野(晴臣)さんの歌を聴いたりしていくうちに、歌い上げなくても歌える歌があるんだなと思って。自分が恥ずかしくならないような、無理しない歌い方を、ちょっとずつ考えていったら今のカタチになったんですよね。

曽我部 そうそう、だから最初聴いたときも完成形になってるなって感じがした。だから新しいアルバム聴いても、印象が変わんないよね。僕は逆に、全然定まらないっすね、自分の歌っていうのが。サニーデイはもともと声を張らない音楽だったし、キーも低くて、演奏の音量も小さいから、歌い上げちゃうと僕だけバランスがデカくなるし。で、曽我部恵一BANDはもっと、ロックンロールで、うるさくて、キーが高くやらないと歌が前面に出なくって。だから自分の歌っていうのが果たしてどこにあるのかが、未だにわかんないっすね。

星野 全然そんな感じがしないです。もちろん歌の種類の違いみたいなのもあると思うんですけど。曽我部さんらしさ、みたいなのがどっちにもある気がして。なんていうか、あらためてそれを作る必要がない人なんだろうなって。どんな歌い方をしても自然とその人らしさが出る……そんな感じがするんですよね。

曽我部 そういう風になれればいいんだけど、なかなか難しいですよね。だから、もうちょっと人前でやんなきゃなって思うんで、来年は一人でライヴいっぱいやろうと思って。

星野 え、今でもライヴたくさんやられてるのに、さらにソロのライヴ増やすなんて、ストイックすぎるじゃないですか(笑)!

曽我部 いやいやいや。結局、人前でやらないと判断が付かないじゃないですか。

星野 たしかに、それはそうですよね。

曽我部 歌う曲は、カヴァーでもなんでも、どんな歌でもいいんですけど、一人で出来るものがどのくらいのサイズ感なのかっていうところを知りたいなっていうか。ちょうどいい感じの表現方法を知りたいですね。バンドだとバンドっていう武器みたいなものがあるから。だけど、自分が等身大で表現したら、いったいどういうものに見えるのかっていうのを試してみたいですね。どんくらいの、その中でどういう表現が自分で可能かっていう。舞台とかでも、一人芝居ってあるじゃないですか。ああいうのをやりたくなる気持ち、なんとなくわかりますもんね。

星野 僕は怖くて全然出来ないんですけど(笑)、やっぱり一人芝居をやる人はホントに求道者っていうか、ストイックな人が多いなって思います。

曽我部 演劇も音楽も集団でやる表現が多いから、一人でやるのを試してみたいって思うんだろうね。星野くんって、芝居も並行してやってらっしゃるじゃないですか。芝居ってやっぱ、どういうところが魅力なんですか?

星野 僕、文章書いたり映像作ったり、いろんなことやってるんですけど、その中で演劇というか、舞台やドラマに出たりすることは毎日修行してるような気持ちなんです。音楽はやっぱり、自分のやりたいことをやるというか、自分の中から出てくるものを素直に表現することだと思うんですけど、芝居に関しては演出家がいて脚本家がいて、そこに自分をどれだけ託せるかっていう……自分がなくなっていく面白さみたいなのがありますね。自分がなくなったときに出てくる自分もあると思うし。

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