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CROSSTALK #01

曽我部恵一
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星野 源(SAKEROCK)

旧き佳き時代とオーバーラップしたとしても、圧倒的に違う“現代の歌”

星野 曽我部さんって歌を作るときに、どうやって作られるんですか?

曽我部 うーん。やり方っていうのがあるとしたら、音楽をいっぱい聴くんですよ。とにかく手当たり次第聴く。いろんな音楽を聴いて、知らない音楽も聴いて、それですごく感動する音楽もあるし、こんなのやりたいなって思う音楽もあるし。それとは別に、いろんな本を読んだり、いろんな人としゃべったり、いろんな風景見たりしてきたものが、ずっと自分のなかに層になって蓄積されているんですよね。で、たとえば昔の外国の作家の詞を読んで、人を愛することについて、こういう風な言葉にする人ってすごくいいなぁって思ったり、こういうふうに自分も歌を作れたらいいなぁって思いがずっとあったとして、一方で、それとは何か別の、このリフすごいカッコいい!みたいなのが、たまにリンクする瞬間があって。そこから音楽になっていく感覚なんですよね。だから編集作業に近い。なので、自分で音楽を生み出すっていう感覚はあんまりなくて、だいたい借り物っていうか。自分の中にいろんなものを貯めていって、それのどこを切り取って何と合わせて音楽にするか? たとえば、(テーブルの上に置かれたコップを見て)このコップの水について1曲歌いなさいって言われても歌えないんですよ、僕は。それを一度取り込んで、何日か寝かしたり、何年も寝かしたりしないと。自分が日々生きてて、生活の中でいろいろ感動することとか、心に残ることとか、記憶に残る部分をずっと心に置いておいて……って感じです。

星野 一度寝かすのってすごく大事ですよね。僕もあの、なんかいっぱい取り込むものは取り込んで、とにかくいろんな話を聞くようにして。で、こうやって蓄積されていくじゃないですか。自分の場合はなんていうんですかね……うんこになるの待つんじゃないですけど(笑)、うんこになったときに自分のものになっているっていうか。

曽我部 なるほどなるほど。

星野 いいうんこになって出てくるのを待つような、そういう時間ってすごく必要だと思っていて。なんか今、話を伺って、無意識にでもちょっと似てるなぁと思いました。

曽我部 でも、SAKEROCKだとやっぱりメロディ主体だから、メロディであれだけ情報量が込められているというか、そこにいろいろなものが入ってるから、それって、僕みたいに言葉と一緒に歌を作るのとは、またちょっと違うと思うんですね。今回のソロ・アルバムだとやっぱり一曲目の「ばらばら」がすごくいいよね。みんなとうまくつながれないようなことや、分かち合えないようなことを歌ってるでしょ? それをつながれないまま、分かち合えないままとして歌っているのがすごくいい。いや、みんなたぶんそういうことを歌いたいと思ってるんだろうし、ラヴソングとかもそういうことだと思うんだけど、ああいうカタチに落とし込んでるのは素晴らしいと思いましたね。

星野 ありがとうございます。いや、でも、ホントに呪いっていうか(笑)。昔から「世界はひとつ、人類みな兄弟」と言われると、“なんで? そんなわけない”ってすごく思ってたんです。なんでみんなそんなに違和感なく感動してるんだろうって。

曽我部 でもさ、その最終的な結論としてはさ、優しいところに行ってるじゃないですか? 断絶を主張するわけではないっていうか。たとえば“I Love You”とか“君のことわかるよ”ってことをうたう歌もいいんだけど、結局は“みんな誰の気持ちもわからないんだ”っていうことを、ああいう簡単で綺麗な言葉で歌うっていう。だからあの曲は、ホントに名曲だなと思います。

星野 照れますね(笑)。ありがとうございます。

曽我部 昔の歌って“I Love You”のところだけ歌ってたらよかったし、聴く人もそこしか歌に求めてなかったけど、今はやっぱり、歌にあらゆる情報量を込めてほしいと思うんですよ。だから恋のことを歌ってても、その、はじまりと終わりをちゃんと情報として入れといてほしいなっていうのが、聴く側としての欲求のような気がする。昔の曲はそうじゃないもんね。坂本 九さんの歌とか、一瞬のことをすごいきれいに歌ってると思うし。ほんとにもう、永 六輔さんの作る詞が大好きで、ホントに今でもああいうものが“歌”だなって思ってて。だけど、そこから時代を経て、今、自分たちの時代の音楽があると思うんですね。今はもっと、生活の隅々が描写されてるとは思う。だから、自分の作る音楽にしても、SAKEROCKの音楽にしても、星野くんの音楽にしても、どこか旧き佳き時代とオーバーラップはすることはあっても、圧倒的に違うのはそこだと思う。やっぱりそれって“現代の歌”だと思うんだよね。

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