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Shimokitazawa Indies Fanclub

PRODUCER'S TALK

角張 渉(カクバリズム)
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長崎貴将(ギャラクティック)

正直、ライヴ・サーキットにはあまり魅力を感じていなかった。

角張 もともとこのイヴェントは、長崎さんがやろうって言わなければ実現しなかったイヴェントなんですよ。僕は大学に入って上京してから下北沢に遊びに来るようになって、それこそ卒業してからはディスクユニオンでバイトしてたんで毎日のように通ってたんですけど、大人になってきて下北沢の経済のことをちょっと考えたりすると、平日の夜あんまり人いねぇなとか、飲み屋も空いてるなとか勝手に思うじゃないですか? で、長崎さんと二人でライヴハウス行って若いバンドのライヴを観ながら飲んで話してる時に、こういう感じがやっぱり楽しいなって、あらためて感じたんですよね。……エラそうに聞こえちゃったら本意じゃないんですけど、僕らが扱ってるアーティストは、最近ライヴやるところが、若干キャパが上がっちゃってて、ライヴハウスの純粋な楽しさ──たとえば観客は50人ぐらいしかいないけど、バンドもすげぇカッコよくて、友達もみんないて、飲んでワハハってやってるような──今まで日常的にあったようなカッコよさを、二人で再確認したというか。その時に、こういう感覚でどのライヴハウスにもカッコいいヤツが出てて、みんなが街をウロウロしながら楽しんでもらえる、単純に自分たちが面白いって思えるライヴ・サーキットが出来たらって思ったんです。

長崎 僕らはふだん、それぞれレーベルもやってマネジメントもやってるんですけど、どっちも抱えてると両方の視点からツアーなりイベントなりの計画してたりするので、どうしても戦略的にならざるを得ないところがどうしてもあるんですよね。だけど、そういうのが今回の下北沢インディーファンクラブにはまったくない、ゼロなんですよね(笑)。純粋に自分たちが楽しみたいっていう。そういうところではすごく新鮮ですよね。

角張 ただ、僕はライヴ・サーキット系のイヴェントって、あまり行ったことがないし、正味な話すると、いわゆるライヴ・サーキットにあんまり魅力を感じてなかったところもあるんです、むしろ。下北沢に限らず大阪しかり渋谷しかり、いろんなところでよくやってるイメージがあって。

──結局、あまり面白くないって思えてしまうライヴ・サーキットっていうのは、ビジネス主導とかプロモーション主導だったりするさまざまな思惑があからさまに見えちゃうのがひとつの要因なんでしょうね。それと、美術館でいうキュレーター的に、ひとつの審美眼でイベントを作り上げたり、出演バンドを揃えてないなっていうのを感じちゃうと、なんか醒めてしまうというか。一見、なんの脈絡もなさそうなアーティストたちが並んでてても、ライヴ・サーキットを企画する側が、そこを共通して面白がれる筋道が示せてあげられればいいけど、そうじゃないところも多いですもんね。

角張 そう。自分の経験でいえば、3年ぐらい前に下北沢で開催された深夜のクラブ・サーキット“下北ナイトウォーカー”って中学校の同じクラスで前の席に座ってたヤツが企画してる(註:企画者の一人である菅野克哉氏)イヴェントで、僕はそれにDJで呼ばれて。行ってみたらなかなか面白くて……って、その時もベースメントバーとWEDGEにしかいなかったんでいつもとあまり変わらないんですけど(笑)。でも、こうやっていろんなところ回ったら楽しいんだろうなって思いつつ、夜も深かったんで行かなかったんですけどね。あと“Shimokita Round Up”とかは、『Quip』って雑誌が主催してることもあって、ひとつの枠組みというか色味が出せるので成功例だと思います。そういったライヴ・サーキットの成功例もいろいろあるけど、そこで僕らなりのライヴ・サーキットの面白さを呈示できればと思って。まぁ、憧れのSXSW(註:毎年3月テキサス州オースティンで開催されるライヴ・サーキット)っていうのはまずありますけど(笑)。

長崎 僕らのレーベルや所属してるバンドや関係が深いアーティストもそうだけど、今回の下北沢インディーファンクラブに出るバンドも、あまりライヴ・サーキットっぽくないメンツなんですよね。なのでお客さんも、ふだんからそういうライヴ・サーキットにあまり行かない人も多いんじゃないかと思うんですよね。だから「すごい楽しそう!」とか「新鮮!」って言われることが多いし、実際自分たちも新鮮味を感じるところも多いですからね。

角張 下北沢に違う空気を入れるっていうか、大体関西のバンドも多いし、下北沢であんまりライヴやったことのないバンドも多いし。でも、それでいいかなって思うんですよね。そこで、いわゆる下北沢っぽいバンドっていうのは、僕らの中でも誰も発案しなかった。シェルターといえば誰それみたいな、それやっちゃうと他のイベントと一緒になっちゃうし、俺らとやる必然性はないのかなって。

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